目次
はじめに
新会計基準の導入は、経理部門だけの仕事と思われがちですが、実際には営業・購買・事業企画など、現場部門の協力が不可欠です。特に、収益認識やリース取引などでは、契約実態を把握している事業部門の理解がなければ、正しい会計処理ができません。
しかし、新基準の内容が専門的で難しいため、現場に正しく伝わらなかったり、協力を得られなかったりするケースも少なくありません。本記事では、事業部メンバーにも理解されやすい社内説明と、それを円滑に引き継ぐためのコツを紹介します。
なぜ事業部の巻き込みが必要か?
実態ベースでの判断が求められる
新基準では「契約書に書いてあること」だけでなく、「実際の取引実態」に即した判断が重要です。そのため、現場の声や事業の流れを踏まえて会計処理を判断する必要があります。
契約変更・新規スキームに対応するため
新しいビジネスモデルや取引スキームが導入されたとき、事前に経理と相談せずに進めると、会計処理が後手に回るリスクがあります。制度上の「地雷」を踏まないためには、日頃から会計基準の視点を共有しておくことが大切です。
社内説明のポイント
難しい会計用語は避け、具体例で伝える
- “履行義務の充足” → “お客様にサービスを提供したタイミング”
- “収益の認識タイミング” → “売上をいつ立てるか”
- 会計基準そのものよりも、「なぜ今これが必要なのか」「何が変わるのか」に焦点を当てて説明
事業部ごとの影響を整理する
- 営業部:契約書のひな形変更、売上計上のタイミング変更
- 購買部:リース資産の識別、使用権資産の管理方法
- 企画部:制度変更による業績KPIへの影響、経営指標の変化
Q&A形式でよくある質問を先回り
- 「この契約、今までと同じでいいの?」
- 「このスキームだと売上はいつ立つ?」
- 「Excel管理でもいいの?」など
引き継ぎの工夫ポイント
社内説明用資料をテンプレート化
- 部門説明用の共通フォーマット(PowerPointやNotion)を作成
- 部門別の影響やFAQもあわせて盛り込む
ロール交代時に動画で引き継ぎ
- 会計基準や社内ルールの説明を録画して残す(LoomやZoom録画)
- 異動者・新入社員が自習できる仕組みを整える
事業部からの相談ルートを明確に
- “何か困ったら誰に聞けばいいか”を明示
- 会計相談専用のSlackチャンネルやメール窓口を用意
周期的なフォローアップ機会の設定
- 半期や四半期ごとに制度改正の説明やQ&Aセッションを開催
- 「一度伝えたら終わり」ではなく、定着するまで伴走する体制づくり
まとめ
新会計基準の定着には、経理部門だけでなく事業部メンバーの理解と協力が欠かせません。制度の内容をわかりやすく伝える工夫と、それを後任にも引き継げる仕組みが、全社的な制度対応の鍵を握ります。
属人化せず、誰が担当しても説明・対応できる体制をつくることで、制度改正をきっかけにチーム全体のレベルアップにもつながります。
関連リンク
- 金融庁「収益認識に関する会計基準」:https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20210331/01.pdf
- 日本公認会計士協会「事業部との連携による制度対応」:https://jicpa.or.jp/specialized_field/ifrs.html
- 経済産業省「新会計基準の実務展開事例集」:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/2021_02.pdf
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