はじめに
近年、大手企業を中心に「希望退職制度」や「早期退職制度」を導入する動きが増えています。特に40代・50代の社員を対象にした募集が多く、「会社から勧められたけれど本当に応じて良いのか?」「自分から手を挙げるべきなのか?」と迷う方も少なくありません。
長年勤めた会社を離れることは、人生の大きな決断です。退職金の上乗せや再就職支援などのメリットがある一方で、退職後の家計や転職先の確保、年金・保険の手続きなど、考慮すべき点は多岐にわたります。
この記事では、希望退職に応募すべきかどうか迷う40代・50代の方が、冷静に判断できるように確認すべき5つのポイントを整理します。さらに、いざ応募を決めた後に大切な「引き継ぎの準備」についてもお伝えします。
希望退職制度とは何か
まずは、希望退職制度について整理しておきましょう。希望退職制度とは、企業が一定の条件を提示して従業員に早期退職を募る制度です。一般的には、通常の退職金に上乗せ金が支給されることが多く、再就職支援を含むキャリアサポートが用意される場合もあります。
企業が希望退職を募集する背景には、経営環境の変化や事業の見直し、人件費の抑制、組織の若返りなどがあります。特に人件費が高くなりやすい40代・50代のミドル世代が対象になることが多く、「あなたも対象です」と突然言われ、戸惑うケースは珍しくありません。
魅力的な条件に見えても、退職後の生活を支えるのは自分自身です。安易に飛びつくのではなく、家計やキャリア、保険・年金など、多角的に確認してから決断しましょう。
ポイント1:退職後の家計を試算せよ
希望退職を検討する際、真っ先に考えてほしいのが退職後の家計です。40代・50代は、子どもの教育費がピークを迎えたり、親の介護費用がかさんだりと、何かと支出が多い世代です。ここを甘く見積もると、退職金の上乗せ分もすぐに消えてしまいかねません。
まずは、現在の収支をもとに、退職後の家計シミュレーションを行いましょう。
・退職金はいくら上乗せされるのか
・失業保険はどの程度受給できるのか
・再就職が何カ月後になると仮定するか
・再就職後の年収はどの程度を想定するか
例えば、月収50万円だった人が年収400万円の仕事に転職すれば、年収は大きく下がります。教育費や住宅ローン、介護費用を含め、退職金でどこまでカバーできるかを冷静に計算し、家族とも共有しておきましょう。
ポイント2:社会保険・年金の切り替えを確認
会社を辞めた後、健康保険や年金はどうなるのでしょうか。意外と見落とされがちですが、ここも重要な判断材料です。
健康保険は、退職後に「任意継続被保険者」として2年間だけ同じ健康保険に加入を続ける方法もあれば、家族の扶養に入れる場合もあります。ただし、扶養に入れない収入があると自分で国民健康保険に加入し、保険料を全額負担する必要が出てきます。
また、厚生年金から国民年金への切り替えも忘れずに。年金の未納期間が生じると将来の受給額に影響するため、抜け漏れなく手続きを行いましょう。
ポイント3:会社独自の福利厚生を洗い出す
会社員だからこそ受けられる福利厚生は意外に多いものです。希望退職で会社を去れば、当然それらも失います。
例えば、
- 社宅・住宅補助
- 健康診断の補助
- 社員持株会
- 退職後のOB会制度
- 財形貯蓄制度
これらが無くなることで、家計にどんな影響があるのかも確認しておきましょう。見えにくいコストですが、住居費の増加などは毎月の固定費に大きく関わってきます。退職金だけで安心せず、失うものをきちんとリストアップしておくと、冷静な判断ができます。
ポイント4:希望退職後のスケジュールと有給消化
希望退職は募集期間が限られており、退職日も会社が一斉に決めていることがほとんどです。再就職が決まっていない場合は、失業保険をスムーズに受給できるよう、退職日とハローワークへの申請タイミングを確認しておきましょう。
また、有給休暇の残日数が多い場合、消化できるかどうかも大切です。希望退職だからといって、全ての有給が必ずしも消化できるわけではないので、上司や人事部と早めに相談し、消化計画を立てておきましょう。
ポイント5:普段から市場価値を把握しておく
希望退職の募集は突然告知され、短期間で決断を迫られることが多いです。その時に慌てないためには、日頃から自分の市場価値を把握しておくことが何より重要です。
転職エージェントに登録して求人情報を確認したり、キャリア面談を受けたりして、自分がどの業界・職種でどのくらいの年収で転職できるのか、目安を持っておきましょう。家族とも「もしものときはどうするか」を話し合っておくと、いざというとき慌てずに済みます。

引き継ぎ計画も忘れずに
希望退職を決めた後は、短期間での引き継ぎが求められます。突然の退職は職場に大きな影響を与えかねません。円満退職を目指すなら、業務をきちんと引き継ぐことが非常に大切です。
- 担当業務をすべて洗い出す
- 後任者が決まっていない場合は、チームで引き受ける方法を考える
- 引き継ぎ資料を作成し、口頭だけで済ませない
- 有給消化と並行して引き継ぎスケジュールを調整する
「辞めるから関係ない」と投げ出すと、後味の悪い退職になりかねません。気持ちよく次のステップに進むためにも、最後まで責任を持って引き継ぎを行いましょう。

まとめ
希望退職は、40代・50代の方にとって人生を左右する大きな決断です。
目の前の退職金だけでなく、退職後の家計、社会保険や年金、福利厚生の喪失などを冷静に確認し、スケジュールや引き継ぎ計画も含めて準備を整えることが大切です。
「退職して良かった」と思えるかどうかは、その後のキャリアと生活設計にかかっています。後悔のない選択をするために、家族とも十分に話し合い、必要であれば専門家に相談しながら進めてください。
そして、決断したからには引き継ぎをきちんと行い、次のキャリアを前向きにスタートさせましょう。
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