教える側も試されている?試用期間の部下に伝えるべき引き継ぎのポイント

目次

はじめに

「この人にそろそろ任せてもいいかな?」
試用期間中の新入社員に対して、そんな思いがよぎるのは当然です。しかし、いざ業務を引き継ごうとすると、「うまく伝わらない」「進捗が見えない」「任せたらミスが…」といった問題が起こりがちです。

その原因の多くは、「受け手の能力不足」ではなく、教える側の伝え方や関わり方にあることが少なくありません。

実は、試用期間の引き継ぎこそ、教える側が試される場面でもあるのです。

本記事では、試用期間中の部下への業務引き継ぎにおいて、教える側が意識すべきポイントや、実践的なノウハウを具体的にご紹介します。


なぜ「教える側」が試されているのか?

試用期間中の部下に業務を引き継ぐという行為は、「知識やスキルを渡す」だけにとどまりません。

試されているのは「伝える力」

同じことを伝えても、相手によって理解度や反応が異なるのが人材育成の難しさです。そのなかで、「どう説明すれば伝わるか」「どこで詰まっているのか」を見極め、調整する力が求められます。

組織としての受け入れ体制も見られている

新しい職場で初めての指導者があなたであれば、その人にとって**“会社の印象”=“あなたの教え方”**になります。つまり、個人の教え方が、組織全体の評価にもつながるのです。

信頼関係のスタート地点

「この人にはなんでも聞いていいんだ」と思ってもらえるか、「怖くて質問しにくい…」と感じさせてしまうかで、その後の成長スピードに大きな差が出ます。指導する側には、信頼関係を築く第一歩をつくる責任があります。


試用期間の部下に伝えるべき「引き継ぎの前提」

まず、業務内容に入る前に以下の3つをしっかり伝えておくことが重要です。

1. 「あなたを信頼している」というメッセージ

「任せるからには、ちゃんと期待してるよ」という言葉を最初に伝えることで、受け手のモチベーションが変わります。
人は信頼されると、それに応えようとするもの。これは引き継ぎの前提として大切な空気づくりです。


2. ミスは“前提”であり、“悪”ではないこと

新人がミスを恐れて萎縮してしまうケースは多いです。
「わからないことは必ず聞いて」「ミスしても、報告してくれたら一緒に考えるよ」と事前に伝えておくと、安心感をもって引き継ぎを受けることができます。


3. 教える側も完璧ではないこと

「自分も昔は失敗したから」といった一言は、受け手との距離を縮める大きな力になります。指導者の人間味が伝わることで、心理的安全性が生まれます。


引き継ぎ時に伝えるべき実務のポイント

ここからは、実際の引き継ぎ内容を伝える際に意識すべきポイントを紹介します。


業務リストは「粒度」と「優先度」で整理する

業務内容をただ並べるだけでは不十分です。以下の2点を明確にしましょう。

  • 粒度:どこまで細かく伝えるか(1タスクの範囲)
    例:「請求書作成」ではなく「①フォーマット確認 ②金額転記 ③宛名チェック ④送信」のように分解
  • 優先度:どれを先に覚えるべきか
    最初に覚えるべき業務、時間があるときに覚えればいい業務を分けておくと、進捗が見えやすくなります。

判断基準と背景もセットで伝える

引き継ぎ時にありがちな失敗が、「作業手順だけ伝えて終わり」になることです。
新人は「なぜこの順番でやるのか」「例外対応のときはどうするのか」が分からずに困ります。

例:「急ぎの問い合わせはA社が多いから、メールではなく電話で対応する」
→背景や理由を伝えることで、応用力が身につく


「やり方」よりも「考え方」を教える意識を持つ

手順はマニュアルでも伝えられますが、現場の対応力や判断力を養うには「考え方」の共有が不可欠です。

  • どう優先順位をつけているか
  • トラブルが起きたとき、まず誰に相談するか
  • 自分なら何を確認してから動くか

こうした思考のプロセスを言語化して伝えることが、指導者としての腕の見せどころです。


教えたあとは「確認とフィードバック」を必ず行う

引き継ぎは“渡して終わり”ではありません。以下のような確認をセットにしましょう。

  • 教えた内容を覚えているか
  • 実際にやってみたとき、どこでつまずいたか
  • 受け手からの質問が出ているか

また、フィードバックは「褒める→改善点→もう一度褒める」の順番で行うと、伝わりやすくなります。


試用期間中の引き継ぎにおけるNG行動

逆に、教える側として避けたい行動もいくつか紹介します。


1. 「見て覚えて」スタイルに頼る

OJTの名のもとに、「一緒にやってればそのうちわかるでしょ」という姿勢は、試用期間中には不適切です。
短期間で成果を求めるなら、明確な言語化とフォローが不可欠です。


2. ネガティブなフィードバックを感情的に伝える

試用期間中は、受け手も自己肯定感が不安定になりやすい時期です。
「これくらいできないの?」という言い方ではなく、「ここを改善すればもっとよくなる」といった建設的な伝え方を心がけましょう。


3. 自分のやり方を押しつけすぎる

新人にも「自分に合ったやり方」があります。
教えるときは「こうやると効率がいいよ」とアドバイスしつつ、最終的には「自分なりにアレンジしてもOK」と伝えると、主体性を引き出せます。


組織としての「引き継ぎ設計」も意識しよう

個人としてどれだけ頑張っても、属人化された環境では限界があります。
以下のように、チームや組織としての引き継ぎ設計も重要です。


メンター・引き継ぎ担当・評価者の分離

教える人と評価する人を分けておくことで、受け手が萎縮しにくくなります。
「この人には相談できる」「この人には評価される」という線引きが、心理的安全性を保ちます。


引き継ぎの進捗を「見える化」する仕組み

Notion、Googleスプレッドシートなどで以下の情報を共有するとよいです。

  • 業務の項目リスト
  • 教えた日付・理解度・メモ
  • 次の確認予定

「どこまで引き継ぎが終わったか」が共有されることで、引き継ぐ側の負担も軽くなります。


まとめ:教える力は、組織の未来をつくる

試用期間中の引き継ぎは、「新人の育成」だけではなく、「教える側の成長」でもあります。
一つひとつ丁寧に教える経験が、後輩やチームとの信頼を築き、組織の成長にもつながります。

  • ただ業務を伝えるのではなく、考え方・背景まで伝える
  • フィードバックを大切にし、成長のサイクルを回す
  • チーム全体で支える設計をつくる

教えることは、任されている証。
だからこそ、しっかり向き合い、部下が自信を持って「もう任せてもらって大丈夫です」と言えるように導いていきましょう。

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この記事を書いた人

国立大学の経済学部を卒業後、新卒で商社に入社し人事を担当。
その後、人材企業⇛コンサルティングファームにて一貫して人事に関わる業務をする傍らHikitsugi-assistを運営しています。

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