はじめに
年末にかけて「退職の申し出が増えてきた」と感じるマネージャーや人事の方も多いのではないでしょうか。
特に秋から冬にかけては、企業にとって「退職ラッシュ」が起こりやすい時期です。
このタイミングでの退職は、業務の引き継ぎや後任の調整が難航しやすく、現場の負担が一気に高まります。
本記事では、なぜ秋冬に退職者が増えるのか、その背景と対応策を整理し、マネジメントとして取るべきアクションをご紹介します。
日本企業では秋冬に年間2回賞与が出る企業が多く年末退職の傾向が強くでますが、年俸制をとる企業でも年の変わり目を一つの節目として転職を選ぶ人は少なくありません。
年末に退職が増える3つの理由
ボーナス支給後に辞めたいという心理
最もわかりやすい理由は、冬の賞与です。
「ボーナスを受け取ってから辞める」というのは、ある意味で合理的な行動です。
企業側から見れば複雑な感情もありますが、働く側からすれば金銭的な節目と心理的な区切りとして、冬の賞与は一つの退職タイミングになり得ます。
年度末退職に向けた“助走”の時期だから
実際に退職するのは3月末でも、10月〜12月には「退職の意思を固め、準備を始める人」が多く存在します。
このタイミングで上司や人事に相談が始まることで、見た目上は“年末の退職ラッシュ”が発生しているように見えるのです。
数年勤めている場合、年度末の多忙な状況が嫌になって年度末前の年末に退職するというケースも存在します。このケースは引き継ぎ体制を適切に整えておかないと年度末の対応ができない事態につながる可能性があります。
子供を持つ従業員の場合、年度末のはプライベートでも大きな変化がある可能性が高く転職意向が高まる傾向にあります。
年末年始に“自分の人生”を見直す機会が増える
忘年会、年末年始の長期休暇、家族との時間——
これらのタイミングで、仕事と人生のバランスを考え直す人は少なくありません。
周囲の転職情報を耳にしたり、自分の現状に疑問を持ったりして、退職の決断に至るケースも多いのです。
特に近年は、様々な職業の実態がweb上で明らかになっており、年収マウント・職種マウントが同窓会で発生し、年末年始休暇明けに若手が退職するというケースも見受けられます。
年末退職がもたらすマネジメント上の課題
後任が年明けにしか決まらない
年末に退職の申し出があっても、後任が年内に決まるとは限りません。
採用・異動の都合に加え、世の中的にも退職が多い時期ですので、年明けまで“空席”の状態が続くことも珍しくありません。採用支援会社が年末年始休暇に入ると年内の穴埋めは絶望的になります。
この期間に業務が滞れば、現場への影響は大きく、年度末がさらに苦しくなります。
引き継ぎが断片的になる
有給消化や年末進行などで時間が限られる中、「とりあえず急いで引き継ぐ」という形になりがちです。
これでは業務の全体像が見えず、抜け漏れ・ミスの温床になります。
年末は休暇のスケジュールの人によることが多いため、そもそも仕事以外に引き継ぎ業務ができないケースも存在します。こういう場合は、上長が適切に間に入って業務の調整と引き継ぎの進行を仕切る必要があります。

チーム全体の士気が下がる可能性
「また辞めるのか…」という空気が広がると、残るメンバーのモチベーションにも影響します。
特に年末は忙しさと重なりやすく、心が疲弊して連鎖退職につながるリスクもあります。
年末に退職が発生すると、せっかくの楽しい年末年始休暇に採用とスタッフのアサインに頭を悩ませないといけなくなるため、上司自身も仕事が嫌になってしまう可能性もあります。
マネージャーがやるべき3つの対応策
1. 退職の兆しを“拾いにいく”姿勢を持つ
1on1の場などで、何となく「雰囲気が違うな」と感じたとき、その直感は意外と正確です。
また、業務ドキュメントの更新が止まっていたり、周囲とのやりとりが減っていたりする場合も、退職準備中のサインである可能性があります。
2. 属人業務の“見える化”を急ぐ
「この人がいなくなると回らない」と言われる業務は、すぐに棚卸しの対象にしましょう。
個人が抱えすぎている業務、他者と共有されていないノウハウ、定型化されていない作業フローなどを早めに洗い出して、引き継げる状態に整えておくことが重要です。

3. 引き継ぎを“属人に依存しない仕組み”で回す
退職者に「引き継ぎ資料作っておいてね」と丸投げしても、忙しさ・意欲の低下・ノウハウの属人化などで理想的な資料が作られることは稀です。
本人任せではなく、テンプレート・ヒアリング・ツールを組み合わせて、チームで“引き出す”引き継ぎに切り替えることが、年末の混乱を防ぐ鍵となります。

年末・年始に活用したい引き継ぎの工夫例
- 「年末引き継ぎMTG」を11月中に開催
→ 複数人でカバー体制を決める/誰が何を引き継ぐか整理する - 業務ドキュメントの年次更新を全員で実施
→ 形式統一されたテンプレートを使い、各自が主要業務を記録する - 有給消化中の連絡方法を明確化
→ Slack・メールでの質問ルールを決め、対応時間を事前合意しておく - Hikitsugi Assistなどの専用ツールを活用
→ 引き継ぎフォーマット、アクセス管理、通知機能などを活かして“抜け漏れゼロ設計”へ
まとめ:冬の退職は“突発”ではなく“予測できるイベント”
秋冬の退職ラッシュは、突然の出来事のように見えて、実は「年末・年度末に向けた流れの中で起きる自然な動き」**です。
大切なのは、「どうせ辞める人が出る」と見越して、早めに属人業務を整理し、引き継ぎの準備をチームで進めておくこと。そうすれば、退職が業務の停滞やチームの混乱につながることはありません。
予測できるイベントを、事前の仕組みで“ノーダメージ化”する——
それが、年末のマネジメントに求められる一番の対応力です。
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