目次
はじめに
育休・産休に伴う引き継ぎは、どうしても“担当者個人に任されるもの”という認識が強くなりがちです。しかし、そのまま放置すると、業務の属人化、情報の断絶、復帰後の混乱、そしてチームの負荷増加という問題が次々に発生します。
いま求められているのは、「引き継ぎ=チーム全体で設計・運用するもの」という意識への転換です。
この記事では、人事やマネジメント層に向けて、属人化しがちな育休・産休前後の引き継ぎを“組織として対応する”ための考え方と実践ステップを紹介します。
なぜ「個人任せの引き継ぎ」が危険なのか?
引き継ぎの質と量にばらつきが出る
担当者によって情報量や資料の完成度が異なると、受け取る側が困惑し、業務がスムーズに引き継がれません。
急な体調変化や出産で準備が不十分になるリスク
特に産休・育休直前は体調や家庭事情の変化も多く、想定通りに引き継ぎが進まない可能性があります。
引き継ぎ後のサポートが不明確になる
「一応引き継いだ」という状態のまま、周囲が状況を把握できないと、トラブル時の対応が遅れるリスクがあります。
組織対応型の引き継ぎ体制を構築するための5ステップ
ステップ1:業務の棚卸しと構造化(チーム主導)
- 本人任せにせず、マネージャー・チーム全体で業務を洗い出す
- 担当業務ごとに「目的/内容/頻度/関係者/リスク」を明確化
- ExcelやNotionで業務マッピングシートを作成し、誰でも更新可能に
ステップ2:業務の分担設計を“引き継ぎ前”から始める
- 「後任が決まってから動く」のではなく、タスクごとに担当候補を事前に検討
- 「引き継ぎ先はこの人」ではなく「この業務はチーム全体で回す」という分担発想へ
- メイン+サブ体制(W担当制)を基本にする
ステップ3:引き継ぎドキュメントを組織標準に
- 社内のフォーマットを統一し、作成負担を軽減
- SlackやNotionなど、部署横断で使えるツールで管理
- 「フォーマットに沿って埋めるだけ」で一定の品質が担保される
ステップ4:OJTとレビュー体制を整える
- チーム内で「この業務を●●さんが引き継ぎ中」と共有し、サポートし合える体制に
- 引き継ぎ後に上司や第三者がレビューして「本当に引き継ぎできたか?」を確認
- 毎週のチームミーティングで進捗を可視化・共有する仕組みに組み込む
ステップ5:復帰後も“組織的に”サポートする仕掛けを作る
- 復帰時の逆引き継ぎ(何が変わったか/どこまで戻すか)も明確に設計
- チーム内で「○月中は慣らし期間」と共有し、業務負荷を調整
- 「一人に任せず、誰でも助け合える」チーム文化の醸成が重要
組織対応が進んだ企業の事例(抜粋)
事例①:IT企業A社
- 業務引き継ぎをNotion上でテンプレート化&一元管理
- マネージャーが引き継ぎ進捗を週次でチェックする体制により、属人化を防止
事例②:製造業B社
- 育休に入る社員に対して「チーム引き継ぎワークショップ」を実施
- 関係者全員で業務棚卸し→担当再分配→OJTのスケジュールを合意形成
- 結果として、復帰後もチーム内で柔軟にカバーし合える文化が定着
人事・マネジメントが担うべき役割
組織的な「型」を整える
- 引き継ぎ資料のフォーマット整備
- 引き継ぎガイドラインやチェックリストの策定
- 定例報告や人事面談での進捗確認フロー導入
引き継ぎの“質”を評価対象にする
- 引き継ぎ準備・チーム共有・OJT実施などを評価項目に含める
- 評価に組み込むことで、属人的な放置を減らす抑止力に
チーム運営者の巻き込みを徹底する
- 「業務は本人が整理しておいてください」ではなく、「チームで支えるもの」として周知
- マネージャー研修で「チーム引き継ぎ設計」の重要性を伝える
まとめ
育休・産休の引き継ぎは、もはや「個人任せ」で済む時代ではありません。持続可能なチーム運営と、誰もが安心して育休を取れる文化を築くためには、組織対応への転換が不可欠です。
業務の見える化・ツール整備・チーム巻き込み・復帰支援まで、全体を「仕組み」として設計することで、引き継ぎは“業務停止”ではなく“知識と責任の共有”の機会になります。
誰かが抜けても、誰かが支えられる組織へ。その第一歩は、「引き継ぎの型」を組織全体で持つことです。
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