はじめに
育休・産休を前にした引き継ぎは、社員本人にとっても、チームや上司にとっても、時間的・精神的な負担が大きいものです。特に属人化された業務や、後任が未確定のケースでは、引き継ぎが場当たり的になり、復帰後やチーム運営に混乱を招くことも。
そこで重要になるのが、人事主導で整備された「引き継ぎチェックリスト」の存在です。あらかじめ引き継ぎの全体像と必要項目を明文化し、テンプレート化することで、現場の負荷を軽減しながら質の高い引き継ぎを実現できます。
本記事では、人事・マネジメント向けに、育休に入る社員を支援するための「引き継ぎチェックリスト」の設計ポイントと、活用方法を徹底解説します。
なぜ人事が「引き継ぎチェックリスト」を用意すべきなのか?
✅ 引き継ぎ内容に抜け漏れが生じやすい
担当者任せでは、業務の整理・伝達・記録にばらつきが出やすく、結果として後任や周囲が困る場面が発生します。
✅ チーム内で役割分担が曖昧になりがち
「この業務は誰が持つ?」「何をどこまで引き継ぐ?」という曖昧さが、業務の滞留や二重対応につながることも。
✅ 本人も「どこまでやればよいか分からない」と不安を抱える
チェックリストがあれば、本人も計画的に準備でき、上司・後任とのコミュニケーションも円滑に進みます。
✅ 制度として整備すれば、組織全体で引き継ぎ文化が定着する
属人化から脱却し、「チームで支える」仕組みが根付きます。
チェックリストの構成:5つの主要カテゴリ
① 業務の洗い出しと優先順位づけ
- 業務名・内容・実施頻度・関係者を整理
- 「中断OK」「要継続」「要フォロー」などの優先区分を設定
- 使用ツールや業務ルールも合わせて記載
② 引き継ぎ先の明確化と進捗管理
- 業務ごとの引き継ぎ先(メイン・サブ)を記入
- 「伝達完了/OJT実施中/未対応」など進捗チェック欄を設ける
③ ドキュメント・情報資産の整理
- 業務マニュアル・作業手順書・テンプレート・過去データなどを一覧に
- 保存場所(Googleドライブ/Notion/共有フォルダなど)も記載
④ チームへの共有・報告
- チームミーティングでの引き継ぎ共有の有無
- 上司・後任との個別面談や報告機会の確認
⑤ 緊急時対応の確認
- 担当者不在時に想定されるリスクと対応フローを整理
- 「この業務はこの人に連絡」「この場面ではマネージャー判断」など判断基準を明示
テンプレート例(抜粋)
No | 業務名 | 頻度 | 関係者 | 引き継ぎ先 | 状況 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 月次売上報告 | 月1回 | 経営管理部 | Aさん(メイン)Bさん(サブ) | OJT完了 | マニュアル有(共有ドライブ内) |
2 | 顧客対応(●●社) | 随時 | 営業部 | Cさん | 引継中 | Slackログ参照・対応履歴あり |
※ GoogleスプレッドシートやNotionなどで共同管理するのがおすすめです。
人事が行うべき運用のポイント
1. 部署ごとのカスタマイズを前提にする
一律のフォーマットでは不十分なため、現場で加筆・調整できる柔軟な形式にする。
2. 上司とチームリーダーに説明・協力を依頼
チェックリスト活用の意図やメリットを事前に説明し、「マネージャーが管理する」文化を育てる。
3. 定期的な進捗確認の場を設ける
「作成して終わり」にならないよう、週次ミーティングや面談で進捗を見える化。
4. 引き継ぎ完了後は「振り返り」もセットに
育休者・後任・上司それぞれに対し「うまくいった点/課題点」をヒアリングし、テンプレ改善へフィードバック。
5. 全社的な「引き継ぎガイドライン」に組み込む
このチェックリスト運用を社内制度に取り入れ、属人化しない引き継ぎ体制を標準化していく。
まとめ
育休・産休に伴う引き継ぎは、本人だけでなく、受け入れるチーム全体のパフォーマンスに影響を与える重要なプロセスです。
人事が主導して「引き継ぎチェックリスト」を整備し、全社で活用することで、現場の混乱を防ぎ、再現性のある引き継ぎ文化を育むことができます。
「安心して休める」「戻りやすい職場」を実現するには、日々の業務の見える化と仕組みづくりがカギ。今日からできる改善として、まずはチェックリストの導入から始めてみてはいかがでしょうか。
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