はじめに
「お盆明けに突然退職者が出た」──これは決して珍しい話ではありません。
近年、お盆や年末年始、ゴールデンウィーク(GW)といった長期休暇の直後に退職を決断する社員が増えている傾向にあります。特にお盆明けは、転職市場の動きが活発になる9〜10月に差し掛かるタイミングでもあり、退職の引き金となる重要な時期です。
本記事では、お盆明けの退職を防ぐために企業が今から取り組めること、特に「事前の1on1」「組織マネジメント」「心理的安全性の醸成」といった視点から、実践的な予防策を整理します。
なぜ「お盆明け」に退職者が出やすいのか
お盆休みは、多くの社員にとって家族や友人と過ごし、普段の業務から一時的に解放される貴重な時間です。この時間が「自己の振り返り」や「働き方の再考」を促すきっかけになることはよくあります。
社員が退職を考える背景には、次のような要素が重なっています:
- 長期休暇中にキャリアや人生の方向性を見直す機会がある
- 忙しい日常では考えきれなかった不満や希望が明確になる
- 家族や友人との時間で価値観が再構築される
- 「もっと家族との時間を大切にしたい」「今の働き方に無理がある」といった気づきが生まれる
- 転職市場の動きと一致する
- 9〜10月は中途採用が活発化する時期であり、求人数が増えるため退職のハードルが下がる
結果として、お盆明けは「退職」という選択肢を行動に移すトリガーとなりやすいのです。

企業が“お盆前”にできる具体的なアクション
では、企業はどのような準備をお盆前に進めておくべきでしょうか?属人的な引き止めではなく、組織として持続可能な対策を打つことが重要です。
1. お盆前の「戦略的1on1」の実施
お盆前のタイミングで、社員との1on1を計画的に設定しましょう。
- 退職を考えているサインを早期に察知
- 表情や言葉に出ない違和感にも敏感になる
- 「何を大事にしたいか」を一緒に言語化する
- 仕事・家庭・キャリア観など、本人の価値観に寄り添う
- ネガティブな感情を吐き出す機会をつくる
- 上司との心理的安全性をつくることが離職防止の鍵
2. 異動や評価の透明化
お盆前後は、半期の節目で異動や評価面談がある企業も多い時期です。そこで「決定事項の背景」や「評価の根拠」を明確に伝えることが、納得感の醸成につながります。
- 不透明な処遇が不信感を生む
- 「なぜ自分だけ評価が低かったのか」が言語化されていないと離職リスクが高まる
- キャリア展望を共有することが防波堤に
- “この会社での成長像”が見えるだけで、気持ちの整理がつく
3. チーム単位でのミニ振り返りワークショップ
個人対応だけでなく、チームとしても一度立ち止まる機会を設けましょう。
- 「最近うまくいったこと」「改善したいこと」を言語化する
- チーム内のモヤモヤや不満を解消するだけでも離職リスクは下がる
- マネージャーだけでなくチーム全体の心理的安全性を醸成
- 周囲の雰囲気も、退職を考えるかどうかに強く影響します
お盆明けに「退職」が現実化しやすいサインとは
以下のような兆候が見られた場合、お盆明けに退職が表面化する可能性があります:
- Slackや社内チャットの返信が遅くなった
- 1on1で具体的な目標や挑戦を語らなくなった
- 周囲との交流が減り、定時退社が増えた
これらは決して悪いことではありませんが、普段と異なる行動が現れた場合、本人の変化に寄り添う対話が必要です。
退職を責めず、次の防止につなげる視点
万が一、お盆明けに退職者が出た場合でも、原因を探ることで次の離職を防ぐことができます。
- 退職理由を真摯にヒアリング
- 本音を語ってもらえるよう第三者やアンケートを活用
- 同様の価値観を持つ社員に目を配る
- その価値観を大事にできる環境があるか再点検
- 業務や組織構造の見直しを検討する
- 属人化の解消や引き継ぎフローの整備も有効
おわりに|“お盆明け”は組織の危機管理の試金石
お盆明けの退職は、本人にとっても企業にとっても大きな転機となります。しかし、事前の準備次第でそのリスクは確実に下げることができます。
社員が「辞める」という選択肢を取る前に、話せる・相談できる・自分の価値を見出せる環境を整えることが、組織としての責任でもあります。
Hikitsugi Assistでは、そうした組織づくりを支援する観点から、属人化しない業務設計や引き継ぎテンプレート、退職前面談サポートなどの導入支援も行っています。もし「今年のお盆は少し不安だ」と感じているマネージャーや人事の方がいれば、今こそ行動を起こすタイミングです。
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