はじめに
近年、退職代行サービスの利用が急増しています。特に、ゴールデンウィーク(GW)や年末年始などの長期休暇明けに、その傾向が顕著です。この流れは「ブラック企業に勤める人の逃げ手段」として捉えられがちですが、いまやいわゆる”ホワイト企業”で働く人たちの間でも広がりを見せています。
この記事では、退職代行の背景にある社会的・組織的な要因を分析し、企業がいま向き合うべき課題とその対応策について掘り下げていきます。
なぜGW明けに利用が増えるのか
退職代行業者の間では、ゴールデンウィーク明けは年末年始と並ぶ”繁忙期”とされています。ではなぜ、GW明けにこれほどまで退職希望者が集中するのでしょうか?それには、以下のような複合的な要因が絡んでいます。
まず、長期休暇中は通常業務から一時的に解放されるため、心と身体の余白が生まれます。この”余白”が、自分自身の働き方やキャリア、人生の優先順位について考え直す機会を提供します。仕事のストレスに日常的にさらされているときには見えなかった違和感や不満が、休暇中にふと浮かび上がってくるのです。
また、家族や友人と過ごす時間が増えることも大きな要因です。特に育児や介護、パートナーとの時間を大切にしたいという価値観が強まる中で、「この働き方では家庭を犠牲にしている」と気づく人も少なくありません。現代ではワークライフバランスを重視する傾向が強まっており、休暇を通じて“生活”を取り戻した結果、職場に戻ることに強い抵抗を感じるようになります。
さらに、GW明けには「再スタート感」があります。4月入社や異動などで周囲に変化があり、自分自身も何かを変えたいと感じやすいタイミングです。しかし、その新しい環境が想像と違った、あるいは変化がストレスに繋がった場合、離職への意欲が一気に高まります。
実際、Hikitsugi Assistに寄せられた相談では、「4月から新しい上司になって価値観が合わないと感じた」「新体制になってから急に業務量が増え、限界を感じた」といった声が複数ありました。
このように、GW明けは“立ち止まって自分を見つめ直すタイミング”であり、その結果として退職という選択肢が現実味を帯びてくるのです。そして、退職を伝えるハードルが高いと感じたとき、多くの人が「退職代行」という手段を選ぶようになっています。
- 休暇中に自身の働き方や人生について考える時間が生まれる
- 家族や友人との時間を通じて、現在の仕事の違和感が顕在化する
- 職場のストレスから一時的に解放されたことで、再び戻ることへの抵抗感が増す
実際に、Hikitsugi Assistに相談があった例では、「GW中に子どもと向き合ったことで、今の働き方では家庭を大切にできないと気づいた」「長期休暇に入ったことで、はじめて身体の不調が『慢性的なストレスの結果』だとわかった」という声もありました。
退職代行とは何か?
退職代行とは、会社を辞めたい人の代わりに、第三者(弁護士や専門業者)が会社へ退職の意思を伝えてくれるサービスです。依頼者は会社と一切直接やり取りせずに、退職することができます。
心理的なハードルが高く、退職を言い出しにくいと感じる人たちにとって、このサービスはまさに”救済措置”。しかし、その背景には単なる性格や甘えではなく、現代の職場環境が抱える根深い課題が横たわっています。
若者だけじゃない、中高年も増加中
退職代行の利用者層は、かつては20代・30代の若年層が中心でしたが、現在では50代・60代の中高年にも広がっています。
たとえば、長年勤めた会社で立場があるがゆえに辞めにくい、部下に申し訳ないと感じてしまう、会社の経営状況が悪くなる中で退職を切り出しづらいなど、ベテラン層ならではの葛藤があります。そうした背景を抱えながらも、「黙って辞めたい」というニーズが、退職代行利用の後押しになっています。
ホワイト企業でも利用される3つの理由
退職代行=ブラック企業の構図は、すでに過去のものです。近年ではホワイト企業でも利用されるケースが増えており、その背景には次のような要因があります。
- 心理的安全性の欠如:どれだけ待遇が良くても、気軽に本音を話せない職場では退職の意思表示も難しい
- リモート化による距離感の拡大:直接顔を合わせる機会が減り、退職の相談もオンラインでは言い出しにくい
- 強すぎる引き止め文化:善意での慰留が、結果的に「辞めにくさ」を生んでいる
引き継ぎなしで突然辞められる組織のリスク
Hikitsugi Assistでは、属人化された業務やドキュメントの欠如により、「突然の退職」が組織に大きな痛手となる場面を数多く見てきました。
- 顧客とのやり取りの詳細が残されておらず、関係が悪化
- 担当者しかわからない業務が滞り、納期遅延や品質低下に
- 残されたメンバーの心理的負荷が高まり、連鎖的な離職へ
特に退職代行によって突然姿を消すような形になると、引き継ぎはおろか、事後的な確認も困難となります。
人事・管理職ができる対策とは?
退職代行の利用そのものを止めることは困難ですが、以下のような対策によって、リスクを最小化することは可能です。
- 日常的な業務の可視化:マニュアルや業務記録を残す文化を育てる
- 心理的安全性の醸成:1on1やフィードバック機会を通じて退職の意向も話せる風土を作る
- 引き継ぎ支援ツールの導入:Hikitsugi Assistのような仕組みを通じて、属人化を防止する
まとめ
退職代行の利用増加は、単なる「甘え」でも「逃げ」でもありません。むしろ、企業側のマネジメントの課題が浮き彫りになっているサインでもあります。
これからの組織は、「辞められない環境を作る」のではなく、「辞めるときも安心して辞められる環境」を整えることが求められています。Hikitsugi Assistは、その橋渡し役として、引き継ぎの平準化と見える化を支援しています。
もし、あなたの組織でも「突然の退職」への備えが不十分だと感じているなら、いまが見直しのチャンスです。
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