なぜ引継ぎは伝わらないのか?Z世代とベテランの引継ぎで起こるすれ違いの対処法

業務引継ぎは、退職・異動・新入社員受け入れなど、あらゆる場面で発生します。しかし、そこで見過ごされがちなのが「世代間の価値観の違いによるすれ違い」です。

同じ会社、同じ部署にいても、世代によって働き方・情報の受け取り方・コミュニケーションのスタイルは大きく異なります。この違いが引継ぎの現場で「伝わらない」「分かってくれない」「指示が不明確」といった不満や誤解を生み出す要因になるのです。

この記事では、世代間ギャップが引継ぎにどのような影響を与えているのかを掘り下げ、具体的な課題とその対策を紹介します。

目次

世代間ギャップとは?

世代間ギャップとは、生まれ育った時代背景や社会の価値観の違いから生じる、考え方や行動様式の差です。職場では以下のような世代が混在して働いています。

  • バブル世代(1965〜1970年代生まれ):根性・現場主義・人間関係重視
  • 団塊ジュニア〜氷河期世代(1970〜1985年生まれ):自己責任・成果主義・ロジカル重視
  • ミレニアル世代(1985〜1996年生まれ):デジタル黎明期・協調性と多様性を大事に
  • Z世代(1997年以降生まれ):スマホネイティブ・効率重視・共感重視・心理的安全性を求める

このように、それぞれの世代が育ってきた環境は大きく異なります。その違いが、引継ぎの現場では顕著に現れます。

引継ぎにおける世代間ギャップの“あるある”

「見て覚えろ」vs「ちゃんと教えて」

ベテラン世代は「背中を見て覚える」「現場で慣れることが大事」というスタンスが根強い一方で、若手は「マニュアルや説明がないと動けない」と感じがちです。

  • ベテラン「昔は何も教えてもらえなかった」
  • 若手「なぜそれを教えてくれないのかが分からない」

この差が、“指導放棄”と“依存体質”という誤解につながることもあります。

「一度言ったら分かる」vs「繰り返し確認したい」

ベテランは「一回で覚えろ」「メモを取っておけ」と指導しますが、若手は「情報は何度も確認できる環境で整理したい」と考えます。

Z世代はデジタルネイティブであり、情報は「検索すれば出てくるもの」として扱う傾向が強いため、リアルタイムの会話で全て覚えることに不安を感じやすいのです。

「曖昧な指示」vs「明確なゴール設定」

ベテランが「適当にやっといて」「臨機応変に対応して」と言ったとき、若手は「何をどうしたらいいか分からない」とフリーズすることがあります。

Z世代は「明確な目的やゴールがあって初めて行動できる」という価値観が強く、曖昧な表現では動きにくい傾向があります。

なぜ引継ぎで世代間ギャップが問題になるのか?

引継ぎは、単なる情報の受け渡しではありません。日々の業務の背景、注意点、判断基準といった“暗黙知”も含まれるため、言葉以外の部分が非常に重要になります。

しかし、世代によって「伝える側の当たり前」と「受け取る側の常識」がずれていると、次のような問題が生じます。

  • 本来伝えたかった内容が伝わっていない
  • 相手の理解度を誤解して、怒りや苛立ちが生まれる
  • 「この人には教えたくない」と思わせる空気が生まれる

つまり、世代間の“前提の違い”が、引継ぎの質を大きく左右するのです。

世代間ギャップを超えて引継ぎを円滑にするための工夫

1. 情報の可視化と明文化を徹底する

  • 「言ったつもり」「見れば分かるだろう」をなくす
  • マニュアル、フローチャート、FAQなどのドキュメントを整備する
  • SlackやNotionなど、履歴が残るツールでの共有を活用する

2. “なぜ”から伝える

Z世代は、「なぜそれをするのか」に強い関心を持ちます。単なる作業手順だけでなく、目的や背景を伝えることで、理解と納得感が深まります。

3. 質問しやすい空気づくり

「分からなかったら聞いて」と言っても、実際には聞きづらい空気があると、若手は黙ってしまいます。

  • 「ここ、私も昔はつまずいたよ」
  • 「この手順はややこしいから、分からなければ何度でも聞いて」

といった言葉が、質問のハードルを下げてくれます。

4. ゴールと判断基準を明確にする

「どうなっていたらOKなのか」を明示するだけで、若手の行動のブレが大きく減ります。

  • 「顧客からクレームが来ない状態ならOK」
  • 「提出期限までに6割完成していれば一旦出して」

など、基準を言語化して共有することが大切です。

まとめ:引継ぎは“世代をつなぐ”コミュニケーション

世代間ギャップは、どちらが正しい・間違っているという問題ではありません。

異なる価値観や働き方が混在する中で、「自分とは違う前提を持っている相手に、どう伝えるか」を意識することこそが、これからの引継ぎに必要な視点です。

引継ぎは、業務のバトンタッチであると同時に、職場文化や知恵、考え方を未来へとつないでいく“世代間コミュニケーション”でもあります。

丁寧に、やさしく、思いを込めて——

世代を超えて、よりよい職場の未来を引き継いでいきましょう。

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この記事を書いた人

国立大学の経済学部を卒業後、新卒で商社に入社し人事を担当。
その後、人材企業⇛コンサルティングファームにて一貫して人事に関わる業務をする傍らHikitsugi-assistを運営しています。

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