はじめに
「引き継ぎが後回しになり、結局バタバタで終わる」「言わないとやらない」「資料が作られない」――多くの職場で聞かれる引き継ぎに関する悩み。その背景には、引き継ぎが“面倒”で“後回しにされがち”な行動であることが関係しています。
こうした課題に対して有効なのが「ナッジ理論」です。強制ではなく、自然と望ましい行動へと人を促すナッジ(nudge)の考え方を活用することで、社員が“自発的に”引き継ぎを進める環境を整えることができます。
この記事では、ナッジ理論の概要と、それを活かした引き継ぎ促進の実践方法を紹介します。
ナッジ理論とは?
選択の自由を残しつつ、行動を後押しする手法
ナッジとは「ひじで軽くつつく」という意味で、選択肢を奪うことなく、人々がより良い行動を選ぶように仕向ける考え方です。例えば、社員食堂で健康的なメニューを目の高さに置くことで、自然と選ばれやすくするような設計がナッジの代表例です。
強制やペナルティではなく「仕組み」で行動を変える
ナッジは「やりなさい」「ダメです」と言うのではなく、「そうしたくなるような環境」を作る点が特徴です。
なぜ引き継ぎにナッジが有効なのか?
引き継ぎは“重要だけど緊急ではない”行動
社員は日々の業務に追われる中で、引き継ぎの準備を後回しにしがちです。そこで、「自然とやりたくなる・気づいたらやっていた」という状況を生み出すナッジが力を発揮します。
心理的ハードルを下げ、行動のきっかけを与える
「完璧なマニュアルを作るのは大変そう」と感じている社員に対して、小さな一歩を促す仕組みを設けることが、行動につながります。
引き継ぎに使えるナッジ施策の実例
デフォルトの活用(初期設定効果)
- 業務マニュアルのテンプレートを初めから配布・設定しておく
- 引き継ぎツールの「記入例付きフォーム」をデフォルトにすることで、最初のハードルを下げる
可視化と進捗表示
- チーム全体で「引き継ぎ進捗ボード」を表示(例:Notion、ホワイトボード)
- 自分の遅れが“見える化”されることで、自然と行動を促進
メッセージのリフレーミング
- 「引き継ぎは面倒」ではなく、「未来の自分やチームを助ける行動」と伝える
- 例:Slack通知で「1日5分、未来のあなたを助けるために残しませんか?」といった文言を活用
タイミングのナッジ(リマインド設計)
- 月初・週初など、「行動しやすいタイミング」で自動リマインドを送信
- 定例会議の冒頭で「今週、何を引き継ぐか」シェアする時間を設ける
社内ランキングや称賛の仕組み
- 「今月のナレッジ共有賞」など、小さな達成を認める文化づくり
- 名誉や承認欲求に働きかけることで、行動の継続性を高める
ナッジを活かすためのポイント
義務感ではなく「選びたくなる設計」にする
押しつけ感があると逆効果になるため、あくまで“やりたくなる”工夫を意識します。
習慣化できる仕組みに落とし込む
1回きりではなく、継続的にナレッジが残されるよう、業務フローに組み込みます。
マネジメント層の関与がカギ
管理職が「自ら実践」し、「称賛」することで、組織全体の行動が変わります。
まとめ
社員が自発的に動く組織づくりには、「強制」ではなく「設計」が重要です。
ナッジ理論を活用することで、面倒に思われがちな引き継ぎを、自然な日常の行動へと変えることができます。ちょっとした工夫で、社員の行動が変わり、組織のナレッジ蓄積が加速する。そんな仕組みづくりを、ぜひ始めてみてください。
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