はじめに
引き継ぎという言葉には「業務を未来につなげる大切な橋渡し」というイメージがあります。しかし、すべての業務が本当に引き継ぐ価値があるのでしょうか?実は、組織内には“引き継がなくても誰も困らない”業務が意外と多く存在します。この記事では、「引き継がなくても困らない仕事」の特徴や、その見極め方について詳しく解説します。限られたリソースで効率的な引き継ぎを実現するためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
「引き継がなくても困らない仕事」とは?
一見すると必要そうに見える業務でも、実は形骸化していたり、存在意義を失っていたりするケースがあります。以下のような業務は、引き継ぐ必要性が低いと言えるでしょう。
定期的なチェックだが、誰も見ていない報告書の作成
- 毎週提出している報告書が、誰にもレビューされていない → 形式的に続けられているだけで、実質的な意味がない可能性があります。
同じ内容を複数ルートで報告している業務
- チャットとメール、さらに会議で同じ報告を重複して行う → 一つの経路に集約できれば、その他は削減しても支障が出ないことが多いです。
すでに自動化できる作業
- エクセル集計やデータ転記など、簡単なRPAやマクロで代替可能 → 業務内容よりも「やり方を残す」ほうが重要になる業務です。
担当者のこだわりだけで続いている作業
- 特定の人の習慣や美学によるタスク(例:書類のファイル名命名ルール) → チーム全体の利益につながっていないなら、廃止検討も視野に入れましょう。
見極めのポイント
それでは、どのようにして「引き継がなくても困らない仕事」を見分けるのでしょうか?以下の視点でチェックしてみましょう。
1. 誰の意思決定に影響を与えているか?
- 作業結果が誰にも使われていない、意思決定に結びついていない業務は要注意です。
2. やらなかったときに誰かが困るか?
- 「やらないで1か月放置したら何が起きるか?」を想定してみましょう。 → 何も起きなければ、それは廃止可能な業務かもしれません。
3. 目的と手段が入れ替わっていないか?
- 元々の目的を見失い、手段だけが形式的に残っている業務は見直しが必要です。
4. 他の手段で代替できないか?
- より効率的なツールや仕組みで代替可能なら、そちらへの切り替えを検討すべきです。
引き継ぎの前にやるべき「棚卸し」
引き継ぎ=業務をそのまま渡す、ではありません。まずは現在の業務をリストアップし、「残す業務」「改善する業務」「なくしていい業務」の3つに仕分ける“棚卸し”作業が重要です。
棚卸しステップ
- ① 現在担当しているすべての業務を書き出す
- ② それぞれに「目的」「関係者」「頻度」「成果物」を記入する
- ③ 上司や同僚と一緒に「本当に必要か?」を検討する
このステップを丁寧に行うことで、非効率な引き継ぎを防ぎ、後任者の負担も軽減できます。
実際にあった「不要な引き継ぎ」事例
例1:誰も読まないメールレポートの引き継ぎ
前任者が毎週送っていたメールレポートを、形式だけで引き継いだ事例。新任者が「誰が見てるんですか?」と確認したところ、「とくに誰も…」という回答。そこで廃止を提案した結果、チームの誰も困らず、時間も削減されました。
例2:過去の商談履歴データベースの維持
営業チームで10年以上前の商談記録を手作業でデータベースに登録し続けていた事例。だれもそのデータを活用しておらず、結局データベースも開かれていないことが判明。これを廃止して、週3時間の工数削減につながりました。
逆に「絶対に引き継ぐべき仕事」とは?
一方で、以下のような業務は確実に引き継ぐべきです。
- 契約・法令・ガイドラインに基づく業務
- 顧客や取引先に影響が及ぶ業務
- 社内システムのアカウント管理やID設定などの基幹業務
- 暗黙知を含むノウハウ(例:クレーム対応、現場判断)
これらは引き継ぎを怠ると重大なトラブルに発展する可能性があるため、マニュアルや動画、面談などでしっかりと後任に渡しましょう。

おわりに
引き継ぎの目的は「業務の持続」ではなく「価値の持続」にあります。ただ仕事をコピーして渡すのではなく、意味のある仕事だけを未来につなぐ視点が求められます。「この仕事、そもそも要る?」と自問することから、効率的で質の高い引き継ぎが始まるのです。
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