はじめに
引き継ぎは、単なる個人間の業務移行ではなく、企業全体の知識資産をいかに維持・発展させるかという課題です。属人的な情報に依存し続けると、社員の退職や異動が企業の競争力低下につながりかねません。
本記事では、「組織学習(Organizational Learning)」という理論をベースに、引き継ぎを仕組み化するための実践的なアプローチを紹介します。
組織学習とは何か?
・個人の学習を組織の成長に結びつけるプロセス
組織学習とは、個人の経験や知識を、組織全体の知識として定着・共有・活用することを指します。これにより、同じミスを繰り返さず、環境変化にも柔軟に対応できる組織をつくることができます。
・「暗黙知」の共有がカギ
組織学習の重要な要素として、個人の頭の中にある「暗黙知」を形式知化し、チームで共有することが求められます。引き継ぎはこの暗黙知の移転という点で、組織学習の実践の場となります。
なぜ引き継ぎを仕組み化すべきなのか
・人材流動性の高まり
終身雇用が崩れた現代において、社員の異動や退職は避けられません。そのたびに知識やノウハウが失われるのは、企業にとって大きな損失です。
・再現性のある業務運営が必要
「○○さんじゃないとわからない」「××さんに聞いて」では、業務が止まります。属人化を防ぐためには、業務や判断基準を再現可能な形で残す必要があります。
・イノベーションの基盤にもなる
蓄積された知識をもとに、新しい施策や改善が生まれやすくなります。引き継ぎは単なる継承ではなく、発展の起点にもなります。
組織学習を取り入れた引き継ぎの仕組み化ステップ
ステップ1:業務の「なぜ」を言語化する
- 単なるやり方(How)ではなく、「なぜそうしているのか(Why)」を明確に記録する。
- 背景・目的・制約条件を共有することで、次の担当者が判断力を持てるようになる。
ステップ2:ナレッジの見える化と共有
- 業務マニュアルやプロセスマップだけでなく、SlackやNotionに過去の議論・意思決定ログを残す。
- 「こういうケースのときは、こう考えて動いた」といった思考過程も共有資産に。
ステップ3:レビューとフィードバックの仕組み
- 引き継ぎ内容を第三者がレビューし、抜け漏れやわかりにくさを指摘できるようにする。
- 引き継ぎ後も、後任者が改善点を記録・共有できる仕組みを整備。
ステップ4:継続的な学習の場を設ける
- ナレッジ共有会や定例振り返りミーティングなど、日常的に知識が流通する場を設ける。
- 個人の経験が、自然と組織に取り込まれる文化を育む。
成功事例に学ぶ
・IT企業A社の事例
Notionを使って業務プロセス・FAQ・判断基準を一元管理。退職者の引き継ぎが5営業日で完了。
・製造業B社の事例
業務ごとに「業務の目的・背景・注意点」をまとめたテンプレートを導入。後任者の習熟スピードが平均30%向上。
・ベンチャーC社の事例
週1回の「ナレッジ共有ランチ会」で、部署横断的に知識を交換。失敗事例の共有も活発化し、トラブル対応力が強化。
まとめ
引き継ぎを仕組み化することは、「組織として学ぶ力」を高めることに直結します。属人的な業務の引渡しに終始せず、背景や判断の根拠まで含めて共有することで、次の担当者がより良い意思決定を行えるようになります。
これからの時代、企業の競争力は「どれだけ早く学び、共有し、再現できるか」で決まります。引き継ぎは、その出発点であり、組織学習の重要な実践の場でもあるのです。
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