退職者が情報を持ち逃げしたら?引き継ぎと企業秘密保護の関係

目次

はじめに

円滑な引き継ぎが行われないだけでなく、退職者が業務上の情報を持ち出してしまうリスクは、企業にとって大きな脅威となります。特に技術情報や顧客情報などの「企業秘密」が流出した場合、経営へのダメージは計り知れません。

本記事では、引き継ぎと企業秘密保護の関係について解説し、企業がとるべき対策や従業員としての注意点を整理します。


引き継ぎと情報持ち出しリスクの関係

引き継ぎは本来、業務継続のための重要なプロセスですが、その過程で情報が社外に流出するリスクが潜んでいます。

注意すべきポイント

  • 引き継ぎ資料を私的な端末や個人アカウントに保存する行為
  • 顧客リストや設計図、価格表などのデータを無断で持ち出す行為
  • 引き継ぎを装ってコピー・ダウンロードを行うケース

法的に保護される「企業秘密」とは?

企業秘密の漏洩が法的責任につながるには、一定の条件を満たす必要があります。主に、不正競争防止法に基づいて対応されます。

企業秘密の3要件(不正競争防止法 第2条6項)

  1. 秘密として管理されていること(アクセス制限、パスワード保護など)
  2. 事業活動に有用な情報であること(技術情報、営業情報など)
  3. 公然と知られていないこと(公開情報でない)

  • 顧客リスト、営業マニュアル、ソースコード、研究開発データ

退職者が情報を持ち出した場合のリスク

民事責任(損害賠償)

企業が損害を被った場合、退職者に対して損害賠償請求が可能です。ただし、企業秘密として適切に管理されていたことが前提です。

企業の対応

  • 証拠の確保(ログ記録、送信履歴、持ち出し経路)
  • 弁護士を通じて損害賠償請求

刑事責任(不正競争防止法違反)

悪質な場合には、刑事告訴が行われ、不正競争防止法違反として立件されることもあります。

刑事罰の例

  • 10年以下の懲役、または2,000万円以下の罰金(またはその両方)

企業側が取るべき対策

1. 誓約書・秘密保持契約(NDA)の締結

ポイント

  • 入社時や異動時にNDAを結ぶことで、情報持ち出しを防ぐ抑止力になる
  • 退職時にも再確認し、違反時のペナルティを明示する

2. 情報管理体制の整備

対策例

  • 社外持ち出し禁止のルールを社内規定に明記
  • 社用PCからのUSB接続やクラウド外部送信を制限
  • 引き継ぎ資料は会社指定のフォーマット・保管場所に限定する

3. 退職時のチェックリスト運用

実施項目

  • 貸与物(PC、USB、社用スマホ)の回収
  • メールアカウントの停止、システムアクセスの遮断
  • 引き継ぎ資料の提出とレビュー

従業員側の注意点

私物PCや私用メールへの保存は禁止

  • 意図的でなくても企業秘密の漏洩と見なされる可能性がある

退職後も秘密保持義務が続くことを理解する

  • 多くのNDAでは退職後も一定期間、秘密保持義務が継続される

「参考のために持ち帰る」はNG

  • 自分が作成した資料でも、企業資産である限り持ち出しは違法となるケースがある

まとめ

退職時の引き継ぎは業務継続のために欠かせないものですが、情報管理を誤ると企業秘密の漏洩という重大なリスクに直結します。

企業はNDA・情報管理体制・チェックリストなどでリスクを抑制することが重要

従業員も、自身の行動が法的責任につながる可能性を理解することが必要

引き継ぎと情報セキュリティは切っても切れない関係にあります。お互いに信頼関係を保ちながら、トラブルのない引き継ぎと退職を実現しましょう。側面を理解したうえで、円滑な業務移行を実現しましょう。

📌関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

国立大学の経済学部を卒業後、新卒で商社に入社し人事を担当。
その後、人材企業⇛コンサルティングファームにて一貫して人事に関わる業務をする傍らHikitsugi-assistを運営しています。

目次