異動のストレスを軽減する4つのケアを解説（厚生労働省4つのケアモデルに基づく）

February 17, 2025

はじめに

異動は従業員のキャリア成長に重要な機会ですが、環境変化によりストレスが高まることがあります。
異動に伴うストレスを軽減する環境を設定することで、社内の異動がスムーズになりこれまで以上に人材活用の幅を広げることが可能になります。
厚生労働省が提唱する「4つのケア」に基づき、企業が実践すべき異動時のメンタルケアを解説します。

「4つのケア」とは？（厚生労働省提唱）

セルフケア
- 従業員が自身でストレスに対処する力を養うケア。
ラインケア
- 管理職が部下のメンタルヘルスを把握し支援するケア。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
- 産業医や保健師など社内専門家によるケア。
事業場外資源によるケア
- 社外の専門機関を活用するケア。

参考：厚生労働省『職場における心の健康づくり』

異動時に実施すべき4つのケアと具体策

1. セルフケア（従業員自身のケア）

ストレスの自己認識
- 日々の感情や体調の変化を記録し、自分がどのような状況でストレスを感じるかを把握します。例えば、日記やストレスチェックシートを活用することで、ストレスのパターンを明確にできます。
リラクゼーション技法の活用
- 深呼吸やストレッチ、瞑想などのリラクゼーション方法を日常生活に取り入れ、心身の緊張を和らげます。これにより、ストレス反応を軽減する効果が期待できます。
適度な運動の実施
- ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、気分転換やストレス解消に効果的です。定期的な運動習慣を持つことで、心身の健康維持につながります。
信頼できる人とのコミュニケーション
- 家族や友人、同僚など、信頼できる人に悩みや感じているストレスを話すことで、心の負担を軽減できます。話すことで新たな視点やアドバイスを得られることもあります。
専門家への相談
- 自分だけで対処が難しいと感じた場合、産業医やカウンセラーなどの専門家に相談することが重要です。早めの相談が、メンタルヘルス不調の予防や早期回復につながります。

2. ラインケア（管理職のケア）

1on1ミーティング
- 異動直後は週1回など高頻度で実施し、不安を確認します。部下の普段の様子を把握し、「いつもと違う」変化（例：遅刻や欠勤の増加、業務効率の低下、表情や態度の変化）に注意を払います。
メンター制度
- 部署内の先輩社員が新任者をサポートします。定期的なミーティングや面談を通じて、部下の状態や悩みを確認します。
業務量の調整
- 過重労働を避けるため、業務の分担やスケジュールを見直します。
職場の人間関係の調整
- チーム内のコミュニケーションを促進し、良好な人間関係を築くサポートを行います。

3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

メンタルヘルス対策の企画立案
- 心の健康づくり計画の策定
  - 職場の実態に即したメンタルヘルス対策の計画を立案し、継続的な取り組みを推進します。
- 教育研修の実施
  - 労働者や管理監督者向けに、ストレス管理やメンタルヘルスに関する研修を企画・実施します。
相談体制の整備と対応
- 個別相談の対応
  - 労働者からのメンタルヘルスに関する相談に応じ、適切な助言や支援を提供します。
- 相談窓口の設置
  - 労働者が気軽に相談できる窓口を設け、プライバシーに配慮した対応を行います。
職場環境の評価と改善
- ストレスチェックの実施と分析：定期的にストレスチェックを行い、その結果を基に職場環境の問題点を明らかにし、改善策を提案します。
- 労働条件の見直し
  - 労働時間や業務内容など、メンタルヘルスに影響を与える要因を評価し、必要に応じて改善を図ります。
事業場外資源との連携
- 外部専門機関とのネットワーク構築
  - 必要に応じて、医療機関やカウンセリングサービスなどの外部資源と連携し、労働者への支援体制を強化します。

4. 事業場外資源によるケア

外部カウンセリング機関との連携
- 従業員支援プログラム（EAP）の導入
  - 外部のカウンセリングサービスと契約し、従業員が匿名で専門家に相談できる環境を提供します。
- 専門医療機関の紹介
  - メンタルヘルス不調が疑われる従業員に対し、適切な医療機関を紹介し、早期の診断・治療につなげます。
公的機関や地域資源の活用
- 労働基準監督署や産業保健総合支援センターとの連携
  - 職場環境の改善や労働条件に関する相談・指導を受けることで、職場全体のメンタルヘルス対策を強化します。
- 地域の精神保健福祉センターの活用
  - 地域の公的支援機関と連携し、従業員への支援体制を充実させます。
専門家による教育・研修の実施
- 外部講師を招いたメンタルヘルス研修
  - 専門家による最新の知見や対処法を学ぶ機会を設け、従業員のセルフケア能力を高めます。
- 管理職向けのラインケア研修
  - 管理職が部下のメンタルヘルスに適切に対応できるよう、外部の専門家から具体的な指導を受けます。