顧問税理士の交代で困らない!経理担当が知っておきたい仕訳・決算申告引き継ぎのコツ

目次

はじめに

「今の顧問税理士、ちょっと合わないかも…」
「クラウド会計に対応してなくて、不便…」
「レスポンスが遅くて困っている…」

そんな理由から、税理士事務所を変更しようと考える企業や個人事業主は少なくありません。しかし、意外と見落とされがちなのが「引き継ぎ」の段取りです。税務の世界では、年度や月ごとの申告・記帳業務が積み重なっており、うまく引き継がれていないと、過去データの喪失や申告漏れ、税務調査時の対応ミスなどのトラブルが起こりかねません。

本記事では、顧問税理士を変更する際の引き継ぎについて、企業担当者や個人事業主の方向けに、押さえておくべきポイントと注意点を解説します。


なぜ顧問税理士の引き継ぎが重要なのか

業務が「過去の積み重ね」だから

税務や会計の業務は、前期までの数字を引き継いで行われる性質があります。仕訳の基準、会計ソフトの設定、科目の運用ルールなど、前任税理士が把握していた背景が不明確になると、新しい税理士が正確な対応をすることが難しくなります

データの所在が不明になるリスク

実際によくあるトラブルとして、税理士事務所と社内経理が両方退職し、過去の仕訳がまったくわからなくなったというケースがあります。法人・個人問わず、決算書や総勘定元帳、仕訳帳のバックアップは会社側でも必ず保管しておくべきです。

税務調査・金融機関対応にも影響

万が一税務調査が入った場合、過去の申告内容や処理基準を税理士が理解していないと、正確な説明ができずペナルティを受ける可能性も。特に金融機関との付き合いがある場合は、会計処理の一貫性も重要視されるため、引き継ぎのミスが与える影響は小さくありません。


顧問税理士引き継ぎ前に準備しておくべきこと

契約内容の確認

  • 顧問契約書の有無と内容(解除条件・返却義務など)
  • 契約終了時期と最終業務範囲(例:○月申告までやってもらう)

社内での状況整理

  • 誰が税理士とやりとりしていたか(窓口の特定)
  • 会計ソフトのログイン情報、バックアップの有無
  • 保管場所(物理・クラウド)の明確化

新しい税理士との事前打ち合わせ

  • どこまで引き継ぎ資料が必要か
  • 記帳代行か記帳指導か、業務範囲の確認
  • クラウド対応や連携アプリの整備状況

実際に引き継ぐべき情報・資料一覧

基本情報

  • 法人の定款・履歴事項全部証明書
  • 税務署提出書類の控え(開業届、青色申告承認など)

会計データ

  • 総勘定元帳・仕訳帳・試算表(最低でも直近3期分)
  • 会計ソフトのデータ一式(CSVまたはバックアップファイル)
  • 勘定科目一覧と運用ルール

税務データ

  • 確定申告書、決算報告書(法人税・消費税・地方税など)
  • 税務署・都道府県・市町村提出済書類の控え
  • 納税証明書・未納状況があればその確認

その他

  • 顧問税理士からの助言内容(税務調査対応や節税策)
  • 連絡履歴、定期ミーティングの議事録などがあればベター

引き継ぎの進め方と注意点

ステップ1:現税理士に「変更予定」を伝える

  • 誠実かつ早めに連絡するのが基本
  • メール or 書面で引き継ぎ依頼を出す
  • 退職・終了日を明確にしておく

ステップ2:資料を整理・受領

  • 紙/データ両方で保管が理想
  • 会計ソフトのデータ移行に注意(形式・バージョン)
  • 「もらえるもの」と「もらえないもの」がある点も確認

ステップ3:新しい税理士と初期対応を進める

  • 「わからないこと」は遠慮なく聞く
  • 前任との違いを理解し、運用ルールの見直しも検討

よくあるトラブルと対策

トラブル対策
前任税理士が非協力的契約書で返却義務を確認し、正式文書で依頼
社内の経理も退職してしまった必ずクラウド保管・定期バックアップを取る体制をつくる
勘定科目の使い方が前任と異なる新税理士とすり合わせし、継続的に確認
会計ソフトの形式が違って移行できない変換ツールを使う or CSVで再入力する覚悟を持つ

【テンプレ付】税理士変更時の引き継ぎ依頼メール文例

●フォーマル版(法人・管理部長向け)

件名:顧問契約終了および引き継ぎ資料のご依頼について

○○税理士事務所 ○○様

平素より大変お世話になっております。株式会社△△の管理部○○です。
このたび、顧問税理士契約を○月末をもって終了させていただく運びとなりました。

つきましては、後任税理士への引き継ぎのため、下記資料のご提供をお願い申し上げます。

・総勘定元帳、仕訳帳(直近3期)
・申告書控え
・会計ソフトのバックアップデータ

お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。


●中立版(経理担当者向け)

件名:顧問契約終了に伴うデータご提供のお願い

○○先生
お世話になっております。株式会社△△の経理担当○○です。

今回、顧問契約の終了にともない、後任税理士への引き継ぎを行う必要がございます。
以下のデータをご提供いただけますと幸いです。

・総勘定元帳、仕訳帳(直近3期)
・申告書控え
・会計ソフトのバックアップデータ

ご対応にお手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。


●カジュアル版(個人事業主・小規模事業者向け)

件名:引き継ぎに必要な資料のお願い

○○先生
いつもお世話になっております。
顧問をお願いしていた件について、今回新しい税理士さんに引き継ぐこととなりました。

過去の会計データや申告書などを送っていただけますと大変助かります。
お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします!


引き継ぎを効率化するには?

  • 社内に「税理士切替マニュアル」を作成する
  • 定期的に仕訳・証憑をクラウドに保管
  • 会計ソフトは外部出力ができるものを選ぶ(freee、マネフォ、弥生など)
  • 書類の所在やルールは属人化せずチームで共有

まとめ

顧問税理士の変更は、慎重に進めるべきプロセスです。
「料金が高い」「対応が遅い」といった不満から交代を検討しても、引き継ぎをおろそかにすると、もっと大きなトラブルにつながる可能性があります。

実際に、「税理士を変えたら社内の経理も辞めて、過去の会計データが全くわからなくなった」という事例もあります。

だからこそ、税理士交代の前に「引き継ぎ体制」を整えることが大切です。

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この記事を書いた人

国立大学の経済学部を卒業後、新卒で商社に入社し人事を担当。
その後、人材企業⇛コンサルティングファームにて一貫して人事に関わる業務をする傍らHikitsugi-assistを運営しています。

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