はじめに
ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、長期休暇のあとに職場へ戻ると、環境の変化や人の入れ替わりに直面することがあります。異動や休職、退職などによる「引き継ぎ」が発生するのもこのタイミングが多いですが、実はこの“引き継ぎ”が十分に行われないことで、業務トラブルや取引先との関係悪化が発生するケースが少なくありません。
本記事では、引き継ぎミスを防ぐための基本原則や、引き継ぎを成功に導く工夫を「準備・文書化・共有・フォロー」の流れで整理して紹介します。属人化を防ぎ、組織としての継続性を高めるためにも、ぜひ参考にしてください。
ステップ1:まずは準備。いきなり話さず“全体像”を整える
仕事を誰かに引き継ぐとき、最初にやるべきことは「引き継ぎ対象の業務範囲を俯瞰すること」です。日・週・月・年といった時間軸ごとに業務の流れを棚卸しし、関連する部署・外部との接点もリスト化することで、自分の役割を他者に説明しやすくなります。
この全体整理を抜きにして「とりあえず今やってるタスク」だけを伝えてしまうと、後任者が“なぜそれをやるのか”を理解できず、運用が形骸化してしまいます。
ステップ2:口頭より文書。とにかく「書いて渡す」が基本
引き継ぎで失敗する典型例が、「とりあえず口で説明して、メモしておいてね」という丸投げパターンです。口頭説明は手軽な一方で、抜け漏れや認識のズレが起きやすく、時間が経つほど曖昧になります。
そのため、最低限以下の情報は文書化しておきましょう:
- 業務内容の概要と目的
- 業務の実施スケジュール(いつ、どれくらいの頻度で)
- 使用するツール・フォルダの場所・ID管理のルール
- 関係者一覧(社内外)と連絡方法
- よくあるトラブルとその対処法
特に、ファイルの場所・手順・問い合わせ先といった「小さな前提知識」が欠けると、後任者は何もできなくなります。完璧なマニュアルでなくても良いので、最低限の“業務の骨組み”がわかる資料を残すことが重要です。
ステップ3:名刺・人間関係・パーソナル情報も「引き継ぎ資産」
業務のやり方だけでなく、「誰と、どんな関係を築いていたのか」も後任にとって重要な情報です。名刺のコピーをまとめて渡す、CRMやアドレス帳のデータを共有するといった対応があるだけで、引き継ぎ後の連携がスムーズになります。
可能であれば、以下のような“ちょっとした一言メモ”も添えておくと、引き継ぎ後に重宝されます:
- ○○商事の田中さんは朝早い方が連絡がつきやすい
- △△部長は簡潔な資料を好む
- □□社は月初に忙しくなるので月中以降の訪問がおすすめ
ステップ4:管理職やリーダーは“方針・文化”も引き継ぐ
メンバー層と異なり、管理職やリーダー層が引き継ぐべき情報には、数値に表れない“文脈”や“方向性”も含まれます。
例えば:
- チーム内で大切にしてきたマネジメントの価値観
- 推進中の企画や、暗黙の方針
- メンバー個別の得意分野、気にかけている点
これらは、口頭の中でも特に伝えにくく、文書化して残しておかないと断絶されがちです。後任者がスムーズにリーダーシップを発揮するためにも、意識的に言語化して引き継ぎましょう。
ステップ5:引き継ぎは終わりではない。“フォロー設計”も仕込む
「引き継ぎ=引き渡して終わり」ではなく、むしろ始まりです。実務に取り組み始めた後に質問が出てくるのは自然なこと。以下のような体制を整えておくと安心です。
- 3か月程度の“フォロー期間”を設けておく(Slackやメールで質問OK)
- 必要に応じて1on1ミーティングを設定
- 上司も状況を把握し、後任者と前任者の橋渡し役を担う
また、最重要の取引先や社内関係者には、前任者があらかじめメールや電話で「後任の○○が今後対応します」と一報を入れておくと丁寧な印象になります。
おわりに
引き継ぎは、次の人に「業務だけでなく信頼と土台を渡す」プロセスです。雑にやれば、信頼の継承も切れてしまう。逆に、丁寧に整えて渡せば、組織の信頼と連携力を強める資産になります。
Hikitsugi Assistでは、こうした業務の“引き継ぎ資産化”を支援するテンプレートやノウハウ、引き継ぎチェックリスト、業務マップ作成ツールなどを提供しています。
「自分がいなくなっても仕事が回る」仕組みは、あなた自身とチームを守る最善の備えです。次の長期休暇や異動の前に、ぜひ一度見直してみてください。
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