はじめに
「せっかく時間とコストをかけて採用したのに、なぜか新しい社員が長く続かない」
そんな悩みを抱える企業は少なくありません。特に「古株社員だけが残り、新しい人材は定着しない」という状況は、採用手法や職場環境、マネジメントの在り方に共通する課題が潜んでいるケースが多いです。
特に人材不足・採用費高騰が続く現代では、採用マネジメントは非常に重要になっています。
本記事では、採用から定着までの流れを分解し、企業が見直すべきポイントを解説します。経営層や人事担当の方に向けて、離職を防ぎ、新しい人材が活躍できる組織づくりのヒントをお届けします。
退職による経済的損失はどれくらい?
新卒・中途社員の早期離職コスト(一人あたり数百万円)
調査によると早期離職(入社から1年以内)した場合のコストは以下のように試算されています。
(出典は最後にまとめて表示)
- 新卒社員の場合:530万円〜580万円※1
- 中途社員の場合:640万円〜850万円※2
別モデルケースでの試算
別の調査では、より詳細に以下の金額が示されています。
- 新卒社員:657万円※2
- 中途社員:774万円※2
年収ベースでの損失推計
年収300万円の社員が離職すると、労働分配率や売上に基づく計算で約500万円の損失に相当するとの試算もあります※3。
ケースによっては1,000万円超え
退職による業務停滞や顧客離れ、ブランド毀損などを含めると、1,000万円以上の損失に達するケースも報告されています※4。
採用活動の見直しポイント
求める人物像が曖昧
求人票や面接で伝える人物像が漠然としていると、応募者が入社後に「思っていた業務と違う」と感じやすくなります。
特に古株社員だけが残る企業では、「なんとなくこの人なら合いそう」という感覚採用が行われがちです。結果として、カルチャーフィットしない人材を採用してしまい、早期離職につながります。
選考過程でのリアル情報不足
会社の良い面ばかりを伝え、課題や大変な部分を隠してしまうと、入社後のギャップが大きくなります。
「忙しいけれどやりがいがある」「変化が多いがチャレンジできる」など、実際の働き方や組織の課題も含めて正直に伝えることが、ミスマッチ防止の第一歩です。
特にフルリモート企業での採用においては、フルリモートに慣れていない候補者への説明は重要になります。
フルリモートが理由で対象するケースも少なくありません。

採用チャネルの偏り
人材紹介や求人広告など、限られたチャネルに依存していると、応募者層が似通ってしまいます。
古株中心の組織文化に合う人材だけでなく、新しい風を入れられる人材を採用するには、複数のチャネルを組み合わせる工夫が必要です。
入社後のオンボーディング体制
初日からの孤立感
歓迎の場や業務説明が不足していると、新入社員は初日から疎外感を覚えます。
特にリモートワーク環境では、入社初日から「一人で放置されている」と感じるケースも少なくありません。
業務引き継ぎの不十分さ
古株社員しか知らない“暗黙知”が多い環境では、新入社員が仕事を覚えるスピードが遅れます。
引き継ぎ内容が口頭や個人メモにとどまっている場合、情報の属人化が進み、戦力化までに時間がかかります。
OJTの属人化
新人教育が担当者の経験や性格に依存していると、教える内容や質にばらつきが出ます。
「この人に当たれば成長できるが、別の人だとすぐ辞める」という偏りを防ぐには、教育プロセスを標準化する必要があります。
職場文化とマネジメントの課題
古株社員の影響力が強すぎる
長く働いている社員が悪いわけではありませんが、彼らの意見が絶対視され、新しい提案が通らない環境は要注意です。「うちのやり方はこうだから」という空気が、新しい人材のモチベーションを奪います。
評価制度の透明性欠如
努力や成果が評価されにくい環境では、新しい社員が「頑張っても報われない」と感じ、早期離職につながります。
特に古株社員が評価の中心にいる場合、新しい人材の成長や貢献が見えにくくなる傾向があります。
コミュニケーション不足
リモート化や分業化により、部署間・世代間の交流が減ると、職場への愛着が薄れます。
特にリモートワーク中心の環境では、業務上のやり取りはあっても雑談や非公式な交流がほとんどなくなり、「人間関係の土台」が築きにくい傾向があります。この関係性づくりの不足が、新しい社員の孤立や早期離職を加速させる要因となります。
定着率を上げるための改善アクション
- 採用段階からの情報開示強化
- 会社の良い面と課題を両方伝え、ギャップを減らす。
- オンボーディングマニュアルの整備
- 初日からの業務フローや連絡先、社内ルールを体系化。
- 引き継ぎ・ナレッジ共有の仕組み化
- Hikitsugi Assistのようなツールで、業務の属人化を防ぎ、誰でも同じ情報にアクセスできる環境をつくる。
- 定期的な1on1やフォロー面談
- 入社1か月・3か月・半年のタイミングで面談を設定し、早期離職の兆候を察知。
- 古株社員への意識改革研修
- 新しい人材を受け入れる姿勢や指導方法をアップデート
- 評価への導入
- 採用した社員の継続勤務を上長の評価に組み込む
まとめ
新しい人材が定着しない原因は、採用手法だけでなく、入社後の受け入れ体制や職場文化にまで広がっています。
特に「古株以外が残らない」状況は、暗黙知や人間関係の壁が要因になっているケースが多く、採用・教育・マネジメントの全体を見直す必要があります。
引き継ぎやナレッジ共有を仕組み化することは、その改善の第一歩です。
古株社員の経験を「個人の記憶」から「組織の資産」に変えることで、新しい人材が早く活躍できる職場へと変わります。
参考・出典
- 【注1】内藤忍ほか「人材の早期離職に伴うコスト試算」ナイトー株式会社(2020年)https://www.naito.jp/knowledge/circumstance/2802/
- 【注2】ミツカリ「早期離職によるコストとその影響」ミツカリ株式会社(2021年)https://mitsucari.com/services/columns/cost/
- 【注3】採用コンサルドットコム「離職による企業損失の金額」https://saiyou-cons.com/lost-amount/
- 【注4】ミナジン「離職コストの実態と対策」ミナジン株式会社(2022年)https://minagine.jp/media/general/resignee_loss/
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