日本では、退職時の引継ぎといえば「後任者に丁寧に口頭で説明する」「マニュアルを整える」「最終日に挨拶回りをする」といった光景が一般的です。
しかし、アメリカでは状況が大きく異なります。解雇が日常的に行われ、即日退職も珍しくない中、企業はどのように業務を引き継いでいるのでしょうか?
本記事では、アメリカ企業における引継ぎの実態を、「文化」「仕組み」「ツール」の観点から紐解いていきます。
アメリカ企業における退職・解雇の特徴
アメリカの多くの州では、「at-will employment(随意雇用)」という雇用形態が採用されています。これは、雇用主・従業員どちらからでも、予告なしに契約を終了できるという制度です。
そのため、解雇は突然・即日で行われることも多く、「引継ぎ期間」を前提にした働き方がそもそも存在しないケースもあります。
引継ぎが“なくても回る”仕組みとは?
では、そんな環境で業務をどう引き継いでいるのでしょうか?
業務は属人化させないのが大前提
アメリカでは「引継ぎで困らないようにする」のではなく、そもそも引継ぎが不要なように業務を設計しておくという思想が基本にあります。
- 業務は常に誰でも対応できるように分業化・マニュアル化
- ナレッジは個人ではなく「チームの資産」として管理
- 一人しか知らない作業がある状態はリスクとみなされる
ドキュメント中心の業務設計
属人的な情報伝達に頼らないため、以下のようなツールで日常的に情報をドキュメント化・共有する文化があります。
- Confluence/Notion: 業務マニュアルや手順書を常時更新
- Slack: ナレッジ共有チャンネルでTipsや対応履歴を残す
- Google Workspace: 権限管理された業務ファイルを共有・共同編集
「誰かに聞く」のではなく、「書いてあるものを読む・検索する」ことが標準です。
それでも引継ぎが必要な場合は?
自主退職時の“Two Weeks Notice”
アメリカでは、従業員が自主退職する場合、**2週間前に辞意を伝えるのが通例(Two Weeks Notice)**とされています。これは法的義務ではないものの、ビジネスマナーとして広く浸透しています。
この期間に、以下のような引継ぎが行われます:
- 業務内容・担当案件の棚卸し
- ナレッジベースの更新・整理
- 後任者との1on1でのトレーニング
とはいえ、日本のように「何週間もかけて丁寧に教える」スタイルではなく、「最低限、自立して業務が回る状態にする」ことが目的です。
解雇時は“引継ぎなし”が基本
一方、セキュリティリスクや機密保持の観点から、解雇時には即座に業務から遮断されるケースが一般的です。
- PC・アカウントのロックアウト(即日)
- 社内システムやメールへのアクセス遮断
- 機密情報の持ち出し防止
このようなケースに備えて、日常的に「業務を見える化」しておく文化が根付いています。
アメリカ流引継ぎの背景にある価値観
アメリカ企業における引継ぎ文化は、以下のような価値観に支えられています。
日本の引継ぎ文化 | アメリカの引継ぎ文化 |
---|---|
人から人へ、対面で丁寧に教える | システムとドキュメントで情報共有 |
退職者は“責任を持って引継ぎ” | 業務は日常的に共有・更新するもの |
感情や信頼が前提 | プロセスと仕組みが前提 |
日本では「引継ぎは引き継ぐ人の義務」という考え方が強く残っていますが、アメリカでは「属人化していること自体が問題」であり、日頃から“引き継げる状態を保つ”ことが全員の責任という考え方です。
日本でも活かせるアメリカ流引継ぎのヒント
- 日常的に業務内容を見える化・言語化しておく
- 「人から教わる」より「仕組みから学ぶ」前提で設計する
- 業務手順やツールの使い方は、自分専用ではなくチーム用に記録する
属人化が課題になりがちな日本企業でも、アメリカ式の考え方を部分的に取り入れることで、引継ぎコストを削減し、組織の生産性を高めることができます。
まとめ:引継ぎは“誰かの仕事”ではなく、“仕組みの設計”
アメリカの企業では、解雇が日常的であるからこそ、引継ぎに依存しない仕組みを徹底しています。人が辞めるたびに慌てるのではなく、日常的に情報共有と仕組み化を進めることが前提なのです。
私たちも、「誰かに教えないと分からない」状態から脱却し、いつ誰が辞めても困らない強い組織づくりを目指していきたいですね。
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